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ステークホルダーマネジメント

株式会社コンセント

編著者:

ステークホルダーマネジメント

本ガイドは、公的機関が窓口BPRを進める際に、利害関係者(ステークホルダー)との適切な関係構築と協働(ステークホルダーマネジメント)を実践するための手引きです。具体的には、ステークホルダーマネジメントのステップのうち、ステークホルダーの特定と分析にあたる部分を実践するための行動観察ツールキットとステークホルダーマネジメントツールキットを提供します。

■ツールレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません

中級

■意義・特徴


窓口BPRを実践するためには、ユーザー中心視点で課題を抽出し、異なる部門や課室との連携を強化することが重要です。自治体等において窓口BPRを実践するための支援制度はあるものの、スモールスタートで段階的に取り組みを進めるためのガイドが不足している現状があります。

こうした課題に対して、このツールは、行政サービスの現場を観察し課題を抽出する手法を提供します。これにより、大がかりな準備をせずに、公的組織内で目線合わせをしやすいワークを設計できるようになります。また、よくある市民のライフイベントを起点に、関係する行政手続や関係部署を整理し、連携体制を検討するためのフレームワークを提供します。

このツールを利用することで、次の効果が期待できます。

  • 実際の業務を可視化し、関係者の認識を統一することで、スムーズな課題共有ができる

  • 手を動かしながら市民のライフイベントに関連する行政手続を整理することで、異なる部門の担当課との連携を検討しやすくなる



■活用シーン


次のような問題意識を抱えている行政職員の方に役立ちます。

  • 窓口業務を改善し、行政職員の業務効率を上げ、市民のサービス満足度を向上させたい

  • 複数の部署にまたがるプロジェクトをスムーズに進行したい


■留意事項


  • 特段の前提知識は不要ですが、ステークホルダーマネジメント、サービスデザイン、ファシリテーションに関する知識や経験を持つ方がいると、より効果的に活用できます。



■使い方


窓口BPRの実践を行うため段階として「現状把握」「プロジェクト企画」「あるべき姿の検討」「窓口BPR事業の実施」があります。本ガイドはこのうち「現状把握」「プロジェクト企画」の段階で利用することを想定しています。一人で行うことも可能ですが、職員同士複数人(2〜5人程度)で集まって行うことを推奨します。ワークショップのファシリテーション経験のある方がいるのが望ましいですが、未経験の方だけであってもガイドを参照しつつ取り組んでいただけます。


「行動観察ツールキット」および「ステークホルダーマネジメントツールキット」それぞれの具体的な利用の流れは以下のとおりです。


(「行動観察」ワークの流れ)


  1. まず、ツールキットを活用して現状課題を把握する仲間を募ります。ケーススタディなどを活用し、業務改善に関心を持つ方に声をかけます。

  2. 事前準備として必要な道具を揃えます。行動観察用にストップウォッチ、ボールポイントペン(黒・赤・青)、クリップボード、調査中であることを示す腕章、ワークシート(プリントアウト)を準備します。結果の共有用にフセン、フェルトペン、模造紙を準備します(これらはオンラインホワイトボードツールで代用も可)。

  3. 次に、観察対象とする窓口を決めます。対象を決定したらワークシートに観察対象の場所の地図を記入し、観察を行うのに適した日時を検討します。

  4. 行動観察を行い記録します。利用者の行動を中心に見る方と現地の状況を見る方で役割分担を決めます。注目するユーザーを決め、対象者に着目して情報を記録します。

  5. 観察が終わったら、気づき(課題)を書き出します。フセンとフェルトペンを使い書き出します。フセンに記入する場合は、遠目からでも判別できるよう太字のフェルトペンをお勧めします。ここからの作業はオンラインホワイトボードなどデジタルツールを活用するのもよいでしょう。

  6. 課題をチームで共有します。書き出したフセンをチームに共有しながら模造紙に貼り出します。フセンはグルーピングを行い見出しを付けて内容を整理します。

  7. 最後に、課題を「影響度×実現度マトリクス」で分類しながら重要な課題が何かについてチームで議論します。マトリクスの整理結果を受けて、今後の活動についてチームで議論を行い具体的なアクションにつなげることを目指します。


(「行動観察」ワークの参考時間配分)


  • 約2時間程度:観察、課題整理、改善方針検討 ※事前の準備時間は除く


(「ステークホルダーマネジメント」ワークの流れ)


  1. まず、ツールキットを活用して業務改善に関わってもらいたいメンバーに声をかけます。異なる部署の職員に参加してもらえると多様な視点を得やすくなります。

  2. 必要な道具を準備します。今回利用するワークシートのデータと編集するためのパソコン、Microsoft Office PowerPointを用意してください。対面で実施する場合は後半のチームでのワーク時用に大型ディスプレイやプロジェクターがあるとよいかもしれません。

  3. 次に、検討したいテーマを決めます。「転入」や「出生」、「お悔やみ」など、今後手続を改善したい市民のライフイベントを設定してください。

  4. 「市民ペルソナシート」を利用して、市民ペルソナを作成します。ご自身の組織で該当するライフイベントの申請に最もよく関わるであろう家族構成や市民の属性をイメージし、ペルソナを作成します。具体的なディティールを考えてペルソナを肉付けします。

  5. 「市民ペルソナ」と発生しそうな手続きのチェックリストを利用して、ライフイベントに関連して発生しそうな手続きにチェックを入れます。チームで考えや結果を共有し、お互いに気になる点をフィードバックしあいましょう。

  6. 手続に関係する担当課を洗い出します。「市民ペルソナシート」を参照しながら、どの市民にどういった具体的な手続きが発生するかを洗い出します。次に、手続きを行う先(課)も洗い出します。事前に確認すべき事項や注意点などがあれば備考欄に記載します。

  7. 関係者を整理しコミュニケーション方針を決めます。ここまでチームで検討した内容を集め、メンバーとして巻き込むべき担当課をリストアップします。巻き込みたい人数や声をかける先の係が何か、などを整理し今後どのようなコミュニケーションをとっていくかを検討します。プロジェクトを推進していくために現体制の役割分担を整理し、不足している支援機関などがあれば今後の検討項目として書き出しておきます。


(「ステークホルダーマネジメント」ワークの参考時間配分)


  • 約2時間程度:ペルソナの作成、必要な手続きの洗い出し、関係課の洗い出し、体制案の検討 ※事前の準備時間は除く


(利用する教材)


  • ワークシート

    • 行動観察ツールキット:行動観察シート、結果分析シート

    • ステークホルダーマネジメントツールキット:市民ペルソナシート、手続先洗い出しシート、コミュニケーション計画シート

  • ワークショッププログラム(ステークホルダーマネジメント実践用ガイド)



■実績


  • 埼玉県深谷市において、実際に成果が出た事例から得られた知見を整理し、再現性のある形で活用できるように設計されたフレームワークです。

  • 行政における課題解決の経験を有するサービスデザインの専門家が策定し、行政の現場で活用できるように工夫されています。



■次のステップ


(参考文献とその概要)


  • マーク・スティックドーン, ヤコブ・シュナイダー (著), 関 美和 (訳) (2013). 『This is Service Design Thinking: サービスデザインの実践』ビー・エヌ・エヌ新社.

    • サービスデザインの基本概念やプロセス、具体的な手法を体系的に解説した入門書です。ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、ステークホルダーマップなど、実務で活用できるツールが多数紹介されています。

  • マーク・スティックドーン, マルクス・ホルツマン, アダム・ローレンス, ヤコブ・シュナイダー (著), 長谷川敦士, 関美和 (訳) (2020). 『This is Service Design Doing: サービスデザインの実践』ビー・エヌ・エヌ新社.

    • 『This is Service Design Thinking』の実践編として、より具体的なプロジェクトの進め方やワークショップの手法を詳細に解説しています。質的な調査の実践やプロセスマネジメント、ファシリテーションなども解説されています。

  • ヤン・ゲール, ビルギッテ・スヴァーエ (著), 北村 和夫 (訳) (2015). 『パブリックライフ学入門』鹿島出版会.

    • 本書は、都市空間における人々の行動を観察・分析し、公共空間のデザインや都市計画に活かすための手法を解説しています。行動観察を通じて市民のニーズを把握し、より良い公共サービスや都市環境の実現を目指すヒントが得られます。

  • 窓口BPRアドバイザー派遣事業|デジタル庁. https://www.digital.go.jp/policies/cs-dx/localgovernment-adviser (2025年3月3日アクセス)

    • デジタル庁が提供する「窓口BPRアドバイザー派遣事業」は、自治体の窓口業務改革(BPR)を支援するために、専門アドバイザーを派遣する制度です。


(関連フレームワーク等)


  • ペルソナ:特定のサービスや製品の典型的な利用者像を具体的に描いた架空のユーザー像です。年齢、職業、価値観、行動特性などの詳細な情報を設定することで、複数のプロジェクト関係者のユーザー像を統一することができ、ユーザー視点に立った設計や意思決定を行いやすくなります。

  • ステークホルダーマップ:プロジェクトやサービスに関与する関係者(ステークホルダー)を可視化し、それぞれの影響度や関心の方向性を整理する手法です。関係者間の相互作用や期待を把握することで、円滑な調整や連携を図ることができます。

  • カスタマージャーニーマップ:ユーザーがサービスや製品を利用する際の体験を時系列で整理し、各接点での行動や感情の変化を可視化する手法です。利用者の視点から課題を発見し、より良いサービス設計や改善に役立てることができます。


​【関連情報】

■関連フレームワーク

  • 行動観察調査

人々の行動を客観的に観察し、潜在的な課題や改善点を見つける手法です。利用者の実際の動きを捉えることで、より的確なサービス改善につなげられます。

■関連スキル

プロジェクトマネジメント, デザイン思考, ファシリテーション, コミュニケーション設計

■関連研究・事業

本コンテンツは、総務省行政管理局「行政運営の変革に関する調査研究」事業で作成されたコンテンツを、同局の許諾を得て掲載しているものです。

■ダウンロード資料

本ガイドはクリエイティブ・コモンズ(CC BY-SA 4.0)のもとで提供されており、同一ライセンスの適用を条件に改変・再配布が可能です。

ワークシート

ユーザー向けガイド

■著作者・連絡先

  • 株式会社コンセント

 https://www.concentinc.jp/contact/

■掲載年月日

2025年3月31日

■ご連絡・お問い合わせ

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