ツール概要
複雑な課題を出来事レベルで捉えるのではなく、時系列変化のパターン及びつながり(循環する因果の束)の構造として可視化し、関係者の対話を通じて全体像を描くためのグループワーク型プロセスです。システム思考の基本ツールである時系列変化パターングラフや因果ループ図を応用し、個別の関係者には把握しづらい課題構造のより大きな全体を探ります。
利用者・活用シーン
慢性的な問題が繰り返される組織課題、部門間の対立や認識のずれがあるテーマ、中長期戦略の検討などに役立ちます。多様な関係者が一堂に会し、部分最適を超えて全体最適の視点を共有したい場面で活用できます。学習する組織づくりの基盤形成にも役立ちます。
ツールレベル
中級
ツールレベルとは ・初級:特段の事前学習を要さず、本実践ガイドの学習のみで活用可能 ・中級:関連フレームワークについて別途研修等により学習済みであることが前提 ・上級:関連フレームワークをすでに実践済みであること、又は、個別の知識領域に関する高度な知見があることが前提
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前提・留意事項
組織内の実施においては、特に前提は必要としません。市民、事業者などの利害関係者と一緒に行う場合、最も重視すべき前提は、ファシリテーションのスキルを持った人が進行を進めることです。システム思考について、少なくとも事務局内の1名以上が2-3日間程度の訓練を経て基礎レベルの習得をするのは有用でしょう。
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■意義・特徴
システム思考は、問題や事象について「要素」を分類整理して考えるのではなく、要素間のつながりとそのつながりの全体像を理解する思考法です。ここでシステムとは、「複数の要素が相互に作用し合う集合体」を意味し、特に社会システムにおいて、人間関係、事業、組織、コミュニティ、行政、市場などはすべからくその対象となります。ロジカルシンキングなどの思考法は、物事を要素に分解(要素還元)してシンプルに原因から結果への線形に分析するのが特徴です。しかし、現実の社会システムに施策を実施するにあたって、要素還元、スナップショット、線形で捉える思考法では部分最適や見落とす死角が多く生じるため、より中長期、抜本的に全体像を構造的に把握するためにシステム思考で補完されるようになりました。
短期か長期かで施策の影響が変わる課題や利害関係者を複数巻き込む課題などのいわゆる「複雑な課題」に適用される方法論がシステム思考です。従来は専門家として複雑な事象をモデル化するには数年以上の訓練が必要とされていました。一方で、定性面を中心に簡素化したシステム思考のプロセスが、組織間や地域内の課題においてそれぞれが部分しか見えていない、あるいは短/長期間にトレードオフのあるような施策に関して、その文脈やつながりを可視化する基礎的なプロセスやツールとしても役立つことが多く報告され、国内外でその応用場面が広がっています。
問題や事象は、目に見える出来事レベルにありますが、解決策を講じているのに解決できない問題、あるいは時を経て繰り返し起こる問題においては、事象の奥底にあるパターンや構造を注視することが必要です。システム思考の典型的なプロセスでは、基本ツールである時系列変化パターングラフで動的変化を可視化し、因果ループ図で関係者たちの間に起こる相互作用の構造仮説を描きます。これをグループ共同で行い、また可視化された成果物をもとに対話をするによって、以下のようなメリットにつながります。
出来事への反射的、対症療法的な対応に終始する代わりに、その奥底にあるパターンへの認識を深め、構造レベルでより根本に近い解決策を考えることができる
個々人の分析においては当人の視野、知識、体験の制約を受けるが、同じ事象であっても、周囲に存在するさまざまな視点を踏まえてモデルを構築することができれば、視野を広げ、より大きな全体像を理解できる
互いに視野の広がった状態を築きながら対話を行うことで、相互理解を広げると共に、個別の解決策では達成が難しかった、より高く持続的な効果をもたらす解決策の組み合わせを検討できる
■使い方
本実践ガイドで紹介するシステム思考の基本ツール(時系列変化パターングラフと因果ループ図)は、複雑性や全体性を探求する目的からも、一人で検討するよりも、多様な視点を集めた方がより有用であるとされます。従って、本実践ガイドではグループワークを前提にして紹介します。ファシリテーターはシステム思考に熟達していることが望ましい一方で、正しさへの執着を手放して関係者の対話を促すことに力点を置くことができる方であれば、基本ツールを理解した段階にある基礎レベル(システム思考の講義と演習による訓練日数:2~3日間)の習得者であっても十分有効なファシリテーションを行うことができます。
グループワークの実施にあたっては、思考に制約を与えず、発想を広げやすい環境、例えば、グループ毎に模造紙やホワイトボードで付箋とペンを用いて作業できる環境、オンラインではMiroなどのウェブツールを活用できる環境が最適です。1グループあたり4~7人の範囲で、設定テーマに関心や利害を持つ、職業、性別、立場など多様性あるメンバーでワークするのが理想です。グループ数は、一人のメインファシリテーターが担当できるのは4グループ程度までです。さらにグループ数が増える場合は、2グループ毎にサブのファシリテーター一人を配置できれば、より大人数になっても実施可能です。
具体的なプロセスの流れは以下の通りです。(参考時間配分)*利用する教材
事前準備・テーマ設定・招集
歓迎・自己紹介・チェックイン(15-60分)
導入事例とシステム思考ツールの紹介(15-30分)
課題意識の共有(15-60分)*時系列変化パターングラフシート
具体的な課題設定(15-30分)
因果ループ図作成(30-90分)*因果ループ図キャンバス
因果ループ図による対話(30-60分)
洞察、問い、アクションの抽出(15-30分)
合計で2時間半から終日程度になります。また、ここには出来上がったモデル(因果ループ図等)の練り上げや施策分析の時間は含まれていません。本実践ガイドは、システム思考を活用したグループによるモデルの作成を通じた対話で課題への理解や関係者のさまざまな視点への理解を広げることに焦点をあてています。以下は具体的なワークのインストラクションです。
事前準備・テーマ設定・招集
参加者を招集するにあたりテーマを設定し、検討の目的、変化を起こすための時間軸範囲
