課題解決ツールボックス活用例

2026.4.1.
全庁的なデジタルスキル底上げのための施策の体系的整理(国の出先機関)
■概要
国の出先機関であるA局では、全庁的なデジタルスキルの底上げに向けた対策を検討すべく、DX推進担当者による全5回のワークショップ型の検討を実施しました。AsIs/ToBe分析やロジックツリー分析等の課題解決のフレームワークを用いて現状認識と解決のあり方を体系的に整理し、全庁的なデジタルスキル底上げに向けた検討の基盤づくりを行いました。
■組織
国の出先機関A局
■取り組んだ課題(背景・目的)
同局では、Office365の全庁導入と併せてビジネスチャットなどのグループウェアの活用促進に取り組んできましたが、部署による利用度のばらつきが大きく、十分に生かし切れているとはいえない状況でした。年配者と若手の間でデジタルに関するスキルや認識にもギャップがあり、意欲を削いでいる状況も見られました。こうした問題に対し、DX推進担当では、様々な情報発信や研修会等を実施してきましたが、必ずしも十分な効果は実感できていませんでした。
これに対し、今後A局として、どのように全体の取組を進めていくべきかが課題となっていました。
■進め方の全体像(体制・取組方針)
庁内全体のDX推進に関わっている職員6名で検討グループを作り、外部のファシリテーター(立命館アジア太平洋大学 狩野英司)が加わりました。1.5時間ほどのワークショップを2025年10月~2026年2月にかけて計5回行い、課題及び解決策の整理・検討を進めました。
毎回、ファシリテーターが論点を整理して“問いかけ”を行い、それに対し、メンバーによるアイデア出しやディスカッションが行われました。その結果をファシリテーターが整理し、メンバーが確認する、というサイクルを繰り返しました。
■実際のプロセス
挙げられていた課題について、メンバー間で共通認識が得られるよう整理したうえで、最終的に目指すべき姿をディスカッションしました。その結果、「全職員がデジタルツールを活用している」姿として言語化しました。
その将来像(ToBe)に照らし、問題の洗い出しを通じて現状認識(AsIs)を導出し、両者のギャップを課題として整理しました。[AsIs/ToBe 分析]
その上で、各問題について原因を掘り下げ、本質的な問題発生要因を特定していきました。なお、これらの要因は、すべて根拠となる事実の確認を行ないました。[ロジックツリー(原因分析)]
各要因を所与の要因(局内の努力だけでは解決できないもの)と可変要因(局内の努力で解決し得るもの)に分類し、可変要因に対し解決策のアイデア出しを行ないました。その上で、メンバー発意のアイデアをベースに、補完的に生成AIによるアイデア出しを行い、メンバーの支持投票に基づいて取捨選択を行いました。[AI活用アイディエーション]
選ばれた解決策のアイデア一つ一つと、最終的に目指す将来像との間を、因果関係を確認しながら結びつけていき、施策を体系化しました。[ロジックツリー(変形Howツリー)]
■使ったフレームワークと使いどころ
事前に検討プロセスは決めうちにせず、検討の過程で、必要に応じて都度、それぞれの論点整理に適したフレームワークを活用していきました。今回のワークショップで利用したフレームワークは以下のとおりです。
AS-IS/TO-BE分析:現状(AS-IS)と理想像(TO-BE)の比較を通じて課題を定義し、解決策を導出する手法。
AI活用アイディエーション:思考の制約を外し、量を重視して多様なアイデアを生み出す発散型の創造プロセス。今回はこのプロセスに生成AIを活用。
ロジックツリー:問題や要因を「なぜ(Why)」「どうやって(How)」などの観点で階層的に分解し、構造化するフレームワーク。今回のケースでは、原因分析と解決策の体系化に利用。
■工夫した点・つまずきへの対応
今回のワークショップの特徴として、参加メンバーが庁内のDX推進役ということもあって、問題意識が高く、事前に状況をある程度、的確に把握できていました。このため新規の調査などは行わず、既に黙示的に認識されている課題やアイデアを言語化し、可視化・体系化することに重点を置きました。
前述のとおり、フレームワークありきではなく、あくまでも課題・解決策の検討の過程で必要とされたツールを選択的に利用しました。
■成果と今後の展開
ワークショップの結果、今後のDX推進に向けた課題と重点的に取り組むべき施策が体系的に整理されました。A局では、このメニューに基づいて、各施策の最終目標にとっての意義や位置づけを踏まえて優先順位付けを行い、取り組みを進めていくことが可能になりました。
■これから使う方へのヒント
フレームワーク自体が何かを生み出すことはありません。重要なことは、実際に検討の一歩を踏み出すことにあります。今回の取組における最大の成果は、フレームワークの活用そのものではなく、実際に検討体制を組み、一定の手順を踏んで検討を重ねたこと自体にあります。フレームワークの意義は、こうした検討の失敗をなるべく予防し、効果を最大化することにあります。
DX全般にわたる検討のため、大量の情報処理が必要とされました。このため生成AIはアイデア出しにとどまらず、情報の整理・分類にもフル活用しました。
文責:狩野英司

2026.2.1.
DX推進リーダー負担軽減・職員リテラシー向上プロジェクト(基礎自治体)<進行中>
大分県内の自治体で、課題解決ツールボックスを用いた課題解決の取組みを開始しました。DX推進リーダーの活動促進および負担軽減、ならびに一般職員のリテラシー向上を目指す第一歩として、人事異動時のパソコン環境のセットアップをよりスムーズに行うことに取り組んでいます。
まず、ロジックツリー(WhatツリーおよびWhyツリー)を用いて現状整理と原因の探索を行い、その仮説に基づき簡易なアンケート調査を実施してエビデンスの確認を行いました(EBPMの観点)。その結果、現状における問題状況を明確に整理・特定することができました。
今後は、こうして整理した課題を踏まえ、解決策の検討に進んでいきます。場当たり的に施策を打つのではなく、課題の探索と定義を着実に行ったうえで解決策の探索へと進む、ダブルダイヤモンドのアプローチに基づき課題解決に取り組んでいきます。
関連フレームワーク:
文責:狩野英司

2026.1.1.
DX研修でユーザー視点での課題解決を身に付ける
某県の職員研修所において、基礎自治体職員向けの1日コースのDX研修を実施しました。デジタル化や業務改革といったテーマに加え、サービスデザインについても、「行政機関向けジャーニーマップ基本編」を用いた実習を行いました。
研修ではグループに分かれ、実際の行政課題からテーマを一つ考え、利用者視点でペインポイント(痛み)を探索・特定しながら解決策を導き出すワークに取り組みました。解決策導出には生成AIも活用します。
最終的に、導き出した解決策のコンセプトを明確にするため、インセプションデッキを活用しました。インセプションデッキはアジャイル開発でよく用いられるフレームワークですが、メンバー間での目線合わせを行う上では、どのようなプロジェクトでも有効なツールです。
参加者は、フレームワークを使って課題を解決するための一連の流れを実践することができました。身に付けた知識やスキルを職場に持ち帰り、それぞれの業務改善に実際に役立てていただくことを期待しています。
関連フレームワーク:
文責:狩野英司