■ツールレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません
初級
■どんなツールなのか
ロジックツリーは非常にシンプルで、予備知識がなくても直観的に取り組みやすいフレームワークです。特にワークシートなどがなくても実践可能です。ロジックツリーのワークには、本ツールのようなPowerPointのシートよりも、制約を考えずに発送を拡げられる環境、例えば、対面であればホワイトボード、オンラインであればMiroなどのウェブツールが最適であり、実際に筆者も可能な場合にはこれらを利用しています。
しかし、行政職員の場合、発想を大きく広げていくタイプのワークショップにはすぐにはなじめない場合が多く、何らかの補助線があった方がよいこと、また、職場の端末環境ではインターネット利用に制限がかかってくることも少なくないので、どのような環境でも手軽に実践できるツールとしてPowerPointのシートを利用することとしています。
このツールを利用することで、次の効果が期待できます。
場当たりな問題への対処策ではなく、根本的な原因に基づく本質的な解決策を導き出すことができる
問題を成り立たせている原因の全体像を可視化することができる
物事の本質を見極めようとする視点や、深く洞察しようとするマインドセットを培うことができる
ロジックツリーは一人でも行うことができますが、自分の仕事に関係している問題ほど強くバイアスがかかりがちなので、テーマにもよりますが、一般的にはグループワークで行う方が効果的です。
なお、本ツールでは、原因は4段 階までしか設定していませんが、慣れてきたらトヨタの「なぜなぜ5回」と同様に、5段階まで追加することを推奨します。
■誰の役に立つのか
次のような問題意識を抱えている行政職員に役立ちます。
業務課題に対する解決策に疑問を感じており、今の解決策が本質的な解決策であるかを見極めたい
業務課題への解決策の妥当性を検証し、説得力を高めたい
物事の本質を考える習慣を庁内の職員に拡げていきたい
■前提や予備知識は必要か
特に必要ありません。
■どのように利用するのか
研修会や勉強会の教材として利用することを想定しています。一人で行うことも可能ですが、
一人ではどうしてもバイアスに囚われやすいこと
一人では取り組むきっかけがつかみにくいこと
から、職員同士2~3人で集まって行った方が大きな気づきが得やすいと言えます。スクール形式やオンライン形式でも行えます。ファシリテーターを置いた方がよいですが、特段のスキルは必要ありません。
なお、環境が許される場合は、前述の通り、Miroやホワイトボードを利用した方が望ましいです。
具体的な利用の流れは以下の通りです。
(ワークの 流れ)
まず、会の目的を共有し、必要に応じ、参加者間でアイスブレークを行います。このときテーマとする問題も共有しておきます。どのような問題を設定しても構いませんが、グループワークの場合は同じ問題で設定します。
次に、原因分析の重要性について解説を行います。「フレームワークの種類」の説明及びガイダンスの資料を使って説明してください。最終的なロジックツリーの仕上がりを共有するとともに、上下関係、包含関係、前後関係などの類似概念と混同しないよう注意喚起してください。
参加者に、ロジックツリーを作成してもらいます。まずターゲットとした問題をツリーの左端に記入し、そこから右に向かって枝を伸ばしていきます。初めから網羅的に作ろうとすると思考停止しがちなので、まずは1つの枝で原因4まで掘り下げる ことを目指し、そこまで到達したら徐々に枝を広げるよう指示してください。
所要時間は10分以内で設定して予め終了時刻を伝え、タイムリミットが来たら手を止めてもらいます。
ワークの結果について周囲の2,3名で集まり、テーマとした問題にとって最も重要な問題は何かを共有します。必ずしも最も深いところにある根本原因でなくても構いません。同じ問題であっても意外に多様な視点があることに気づいていただくためのものです。
最後にワークを通じて気づいたこと、これから取り組んでみたいことについて感想を述べ合ってもらいます。自分の仕事でも試してみよう、ということを自ら言葉に出していただき、実践を動機づけることが目的です。
(参考時間配分)
1. イントロダクション(5分)
2. ロジックツリーの説明とその作成方法の説明(10分)
4. ロジックツリーの作成(10分)
5. 結果の共有(10分)
6. 感想の共有(10分)
(利用教材) ※「ダウンロード」資料参照
ワークシート: ロジックツリー(WHYツリー)_ワークシート (PowerPoint) (0.05MB)
ガイダンス: ロジックツリー(WHYツリー)の作成方法 (pdf) (0.7MB)
■なぜ有用といえるのか(実績等)
行政職員向けのDX研修や業務改革研修において、これまで数十回の実績を経てブラッシュアップしてきた研修教材です。
以下は某基礎自治体における研修(2024年)での評価の一部です。
問題解決の手法であるロジックツリーなどについて、実務に取り組むうえで有用と感じた。
ロジックツリーやBPMNは、原因分析やフローの可視化に使えるものなので、活用できればいいと感じました。
問題や課題の解決方法として、ロジックツリーを積極的に活用してみようと思いました。
■もっと学びたい方は
(アドバンス研修・実習)
原因分析は“慣れ”と“実践”が何より重要です。汎用的なフレームワークですので、様々な問題に適用いただき、場数を踏んでいただくことをおすすめします。
(参考文献とその概要)
特に必要ありません。
(関連フレームワーク等)
ロジックツリーには他に、
Whatツリー:何に取り組むべきかを体系的に洗い出す
Howツリー:どのように実行すべきかを体系的に洗い出す
KPIツリー:あるKPIがどのようなKPIで成り立っているかという体系を洗い出す
などがあります。作成方法はWhyツリーと同じですので、様々な場面で試していただくことを推奨します。
【関連情報】
■関連ケーススタディ
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■関連フレームワーク
◆ロジックツリー(Whyツリー)
問題の原因を分析するための手法として有名なのは、トヨタ発祥の「なぜなぜ5回」です。このツールでは、ある事象の原因は何か、その原因をもたらした原因は何か、さらにその原因は何か、という問いかけを5回繰り返すことで、根本原因を発見し、本質的な解決を図るものです。
問題原因の掘り下げは、ロジックツリーという手法を活用することで、より体系的に行うとともに、結果を可視化しやすくなります。ロジックツリーは問題や対策を分解して洗い出していく手法です。1つの問題の分解が進むと木のように広がっていくので、ロジックツリーと呼ばれます。ロジックツリーには、何を行うのかを分解するWhatツリー、そのための手段を分解するHowツリーなど、いくつかの種類がありますが、ここでは原因を分解していくWhyツリーを利用します。
問題原因をどこまで掘り下げるかによって、そこから導出される解決策も大きく変わってきます。例えば、「紙の書類の処理が多くて非効率」という問題に対して、その原因の掘り下げを「電子決裁が浸透していない」というところで留めた場合、その対策は「電子決裁徹底キャンペーン」となることが考えられます。

しかし、さらにその原因を掘り下げ、「ユーザー目線でサービスが作られていない」という原因に行き着いた場合、講じるべき施策は、「ユーザー目線での動線の点検」となることが考えられます。このように同じ問題に対しても、原因の掘り下げ如何によって、全く異なる対策が講じられる可能性があるわけです。

本ツールは、こうした原因掘り下げのためのロジックツリーを行うためのシンプルなワークシートを提供するものです。
ロジックツリーは日頃からロジカルシンキングが求められている行政職員にとって比較的受け入れやすい手法であり、特段 の準備がなくても、「場」さえ設ければすぐに取り組むことができます。他方で、行政職員の多くは場当たり的な対処に慣れてしまっており、原因分析を本格的に行ったことがない方がほとんどです。このため、短時間のワークでも様々な気づきを得ることができます。さらにロジックツリーは、現実の業務課題に対しても適用することができるので、非常に実践的です。
これらの点から、Whyツリーは、行政職員にとって非常に投資対効果の高いフレームワークといえます。
■関連スキル
業務改革
■関連研究・事業
APU調査研究
■著作者・連絡先
狩野英司(行政情報システム研究所 主席研究員、立命館アジア太平洋大学 准教授、有限会社ディーズリンク 取締役CEO)
■掲載年月日
2024年8月
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