ツール概要
BPRにより業務見直しを進めていくためには、あるべき姿を描くバックキャスティング思考での課題の整理が欠かせません。このシートは、AsIs/ToBeのフレームワークを参考に、現状に対してあるべき姿を先に描くことで、問題点や課題を整理するためのツールです。
利用者・活用シーン
どの部門・分野の業務にも役立ちますが、特に次のような課題を抱えている方に向いています。
業務を改善・改革したいけど何から手を付けてよいかわからない
なんとなく「解決策」が思い浮かんでいるが、その解決策で進んでいいか確証が持てない
チームで業務改革を進めるきっかけを作りたい
ツールレベル
初級
ツールレベルとは ・初級:特段の事前学習を要さず、本実践ガイドの学習のみで活用可能 ・中級:関連フレームワークについて別途研修等により学習済みであることが前提 ・上級:関連フレームワークをすでに実践済みであること、又は、個別の知識領域に関する高度な知見があることが前提
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前提・留意事項
特になし
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■ 意義・特徴
自治体DXの推進に当たっては、自治体DX推進計画(第5.0版)においても取組を進める「前提」としてBPRの実施が位置づけられています。BPRとは単なる行政手続のオンライン化ではなく、本来の行政サービス等の利用者の利便性向上及び行政運営の効率化等の両立を図るためにどのように業務を改革するか、再構築するかという取組です。既存業務をただデジタル化するのではなく、利用者の利便性向上と業務効率化を両立するためにはどうしたらよいか。職員自身が、その視点を持って取り組むことが重要です。こうした視点の整理のために、本カレーライスシートを用います。
これまで行政職員は積み上げ方式の細かなバージョンアップ的な業務改善は得意とされてきました。この積み上げ方式の手法をフォアキャスティングとすると、カレーライスシートは、先に業務のあるべき姿(理想の姿)を描く「バックキャスティング」の考えを取り入れています。
現状を描いたあとに、真っ先に「あるべき姿」を描くことで、あるべき姿と現状との間のギャップを浮かび上がらせます。このギャップが「問題」であり、その「問題」を解決するためには何を考えたらよいかという部分が「課題」として整理されるものになります。
行政職員が、あるべき姿を考えることを通じて、真のDXの目的たる「住民のための改革」について住民の視点にたった思考を行うことができます。
■ 使い方
(ワークの流れ)
1 カレーライスシートそのものの作成方法
シートの「○○○○」には、業務名を書きます。
①現在の姿
課題があると感じた業務の現状を「現在の○○○○」に描きます。現状については、自分たち目線のほか、サービス利用者がいる業務であればその利用者にとっての現状も記載します。
②理想の姿
次にあるべき姿を「理想の○○○○」に記載します。ここでも①で記載した対象者ごとに整理してもよいです。少し未来の姿でも構いません。注意するのは、①で「紙申請」をしている→②あるべき姿は「ペーパーレスにする」としてしまうと、これは単なる裏返しです。そうではなく、例えば「役場に来なくても申請ができる」といった解像度を高めたあるべき姿を描くことがポイントです。解像度を高めるためにも、①の段階で誰にとっての現状なのかをきちんと洗い出すことがポイントです。
③目的
次になぜその理想の姿にしたいのか、そうしたい目的を記載します。大体の案件が住民の利便性を高めるためや業務の効率化のためという目的になりがちですが、もう少しその案件特有の目的を考えてみてください。
④問題
①の現状と②のあるべき姿の間にあるギャップとなっている「事実」を書きます。「紙申請」の現状を「役場に来なくても申請ができる」というあるべき姿にするための事実としてあるギャップを書きます。
例えば、ここでは、
紙が役場の窓口でしか取得できない。
紙なので郵送か役場に来るしか提出できない。
紙で申請を受け付けたものを、エクセルやシステムに手入力をしていてミスが起きている。
その場で決定できないので、いったん帰ってもらっている。
紙の決裁に時間がかかっている。
添付書類などを忘れてこられると、再度来庁してもらっている。
などなど、あるべき姿に照らして、できていない部分を事実として書きます。マイナスの部分だけでなく、現状の良い部分を書いても構いません。特に利用者にとって良い部分は残しておき、改革後にその良さを失わないことにもつながります。
⑤課題
④で記載した問題を解決するために検討しなければならないことを項目として書きます。これが「課題」です。④の例に対応するように記載すると、以下のようになります。
役場窓口以外での手続方法の検討
手入力をしない方法の検討
決裁を速やかに実行する方法の検討
事前周知などの工夫の検討
このような記載になります。ここでもまだ「〜の導入」といったことは記載しません。「〜の導入」はあくまで「解決策」です。このシートは、利用者・活用シーンにも記載していますが、解決策を導くのではなく、解決策を考える前段階の整理に用いるものです。また、こうした検討項目を示すことで、チームで解決策を検討する場合にも、同じ目線で考えることができます。
※補足事項
パワーポイントやスライドでまとめる場合、それを一覧で共有することに苦労しました。そうならないためにも、表計算ソフトやノーコード・ローコードツールで作ったフォームに入力したものを、帳票出力するなどする方法をおすすめします。
2 自治体での活用事例
編著者の自治体(芽室町)での活用事例は、ケーススタディ「みんなが自分ごと化。1係1DXの取り組み」としてまとめていますが、全庁的に1係は1つDXしようという1係1DXの取り組みにおいて活用しています。その際の使い方を単純化してお伝えします。
(0)理想のカレーライスづくりに置き換えたAsIs/ToBeフレームワークの習得研修
事前に有志の職員向けに理想のカレーライスづくりをテーマに研修を行いました。4人1組ほどのチームでのグループワークとして、講師側から現在のカレーライスの状況(現在の姿)を提示し、チームで理想のカレーライス(あるべき姿)を設定します。なんのためにその理想のカレーにしたいのか(目的)を考え、(あるべき姿)と(現在の姿)とのギャップ(問題)を可視化します。そのうえで、その(問題)を解決するために検討しなければならない(課題)を設定するというワークを行うことで、感覚を掴みました。
(1)ヒアリングその1
旗振り役のDX担当が、各係とのヒアリングを通じて、日頃課題があると感じていることを聞き取ります。
ヒアリング内容を文字起こしなどして可視化します。
(2)担当部署によるカレーライスシート作成
ヒア リングの結果を元に、課題に感じている業務について、それぞれの担当部署がカレーライスシートを作成します。
(3)ヒアリングその2
担当部署が作成したカレーライスシートをもとに再度ヒアリングを実施します。「1 カレーライスシートそのものの作成方法」で示したとおり、あるべき姿が単に現状の裏返しになっていたり、問題と課題がうまく整理できていなかったり、カレーライスシートに解決策が描かれている場合が多いため、それをヒアリングの中で修正していきます。
(4)カレーライスシートの完成
こ うしたヒアリングを経て、カレーライスシートが完成します。
編著者の自治体では、ここから、カレーライスシートの案件を全町に共有しつつ、解決に向かって取組を呼びかけ、1年毎に進捗状況をチェックしています。進捗状況として、解決済みのものは、その成果の測定を行ったうえで、新たなカレーライスシートの作成に進みます。進捗が思わしくない案件については、ヒアリングなどを通じて困りごとを聞き、どのように前進させていくかを考える。このようなサイクルを回しています。
(利用するワークシート)
ユーザー向けガイド ※ダウンロード欄の資料と同じ
カレーライスシート(パワーポイント版) ※ダウンロード欄の資料と同じ
■ 実績・有用性
編著者の自治体では、2024年度に52係から60件の案件をカレーライスシートにまとめることができました。また、同年度末の集計では全体の6割の案件で進捗が見られ、解決済みとした案件の成果の可視化に取り組んでいます。
また、カレーライスシートを1 係1DXに挙げていない案件の業務改革にも自主的に活用する職員も出てきています。編著者に相談があり伴走で取り組む案件では、目線を合わせるために「カレーライスシート作ろう」と呼びかけるのが定番となっています。
■ 次のステップ
(普段の業務改革での活用に向けて)
業務フロー(BPMN)との組み合わせが効果的です。
業務改革を行う際は、まずはカレーライスシートに描く現状の姿の解像度を上げるために、BPMNを用いて「現状の業務フロー」を描くところから始めています。
現状の業務フローを共有しながら取り組むと、カレーライスシート作成の際に「対象者に応じて」整理するという部分がわかりやすくなります。
現状フローのBPMN作成→カレーライス シートづくりを終えた上で、理想の姿に向かうフローのBPMN作成→解決に取り組む、という流れで取り組むとスムーズに進みます。また、庁内で共有をする際にもどのような進め方や議論で取り組んできたのかが可視化できるため、上層部への説明などもしやすくなりますし、つまづいたところや考え方の相違がどこで生まれたかという部分も理解することができ、修正したり、アップデートもしやすくなります。
掲載年月日
2026年2月
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