ツール概要
本ガイドは、「フューチャー・デザイン」の考え方を活用したワークショップを実施したい方向けの手引きです。「フューチャー・デザイン」とは、現代人である私たちの議論の中に仮想将来世代を参加させ、未来について「将来世代の視点で」考えることで、将来世代の利益も踏まえた意思決定を行えるようにする考え方です。ワークショップの技法として取り入れることで、近視眼的な意思決定を回避し、持続可能な選択を行いやすくなります。
利用者・活用シーン
時間軸の長い計画やビジョンを検討する際に有用です。
自治体では「長期ビジョンの策定」や「住民参加によるまちづくり」等において活用されています。
教育機関では、「未知の問題発見力の向上」等のために授業などで活用されています。
視野拡張につながるため、様々な機関で人材育成に活用することも効果的です。
ツールレベル
中級
ツールレベルとは ・初級:特段の事前学習を要さず、本実践ガイドの学習のみで活用可能 ・中級:関連フレームワークについて別途研修等により学習済みであることが前提 ・上級:関連フレームワークをすでに実践済みであること、又は、個別の知識領域に関する高度な知見があることが前提
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前提・留意事項
特段の前提知識は不要ですが、ファシリテーションやこれからの社会の変化に関する知識や経験を持つ方がいると、より円滑に実施できます。
参加者の主体的な気づきや態度変容を重んじる手法のため、ワークショップをファシリテーションする際は特定の意見に誘導しないよう注意が必要です。
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■ 意義・特徴
フューチャー・デザインとは、現在の議論の中に仮想将来世代を参加させ、未来について「将来世代の視点で」考えることで、将来世代の利益も踏まえた意思決定を行えるようにする考え方です。このような意思決定は、「将来可能性」という私たちの性質が発揮された結果なされるものと言われています。将来可能性とは、私たちが持つ「目先の利益を差し置いてでも、将来世代のしあわせをめざすことでしあわせを感じる」性質のことです。
影響が長期に渡る政策や事業を実施する際、近視眼的な意思決定をしてしまうと、将来世代に負の影響(将来失敗)を与える結果につながりかねません。例えば、都市や公共施設のメンテナンスを先送りし、将来に大きな事故や多額の修繕費が発生すること等が将来失敗にあたります。フューチャー・デザインの導入により、将来失敗の回避につながることが期待されています。
公的機関の業務では、時間軸の長い計画やビジョンの策定や、住民参加ワークショップ等で活用されています。同じ未来の方向性を共有しながら議論することで、個々人の現在の利害関係から一度距離を置くことができ、その結果アイデアが創発されやすくなります。
他には、人材育 成や研修、教育機関での問題発見力向上、企業の新規事業開発にも活用されています。
実務で活用する場合は、ワークショップの手法として取り入れられます。
このツールを活用することで、次のような効果が期待できます。
ワークショップに参加したメンバーが将来可能性を発揮し、将来世代を考慮した意見が出せるようになった結果、持続可能な意思決定が行いやすくなります。
ワークショップ参加メンバーで将来世代になりきって「望ましい未来社会」の姿を想像することから、目指す未来像を自分ごととして捉えた意見やアイデアが生まれやすくなります。
これらの効果は、ワークショップの参加者の属性(行政職員や市民)を問わず期待できます。
■ 使い方
フューチャー・デザイン・ワークショップは、目的や状況に応じて、短時間で手軽に行うことも、数日にまたがる形で長時間かけて行うことも可能です。
本稿に示した「ユーザー向け資料」は、はじめてフューチャー・デザインを知った行政職員の方が試しに3時間程度で実施するケースを想定しています。なお、本資料は財務省Webサイト「はじめてのフューチャー・デザイン」に掲載された進行資料を転載したものです。
以下、本資料に沿ってフューチャー・デザインに取り組む場合について説明します。
(ワークの流れ)
具体的な利用の流れは以下の通りです。
ワークショップの事前準備
ワークショップの実施前に、①テーマ決め、②備品準備、③ファシリテーター決定(チームでの議論を進行)、④スタッフの心得の共有 を実施しておく必要があります。
① テーマは、議論したい内容に応じて設定します。例えば、「2050年の○○地域」、「地域防災の未来」「働き方の未来」など、様々に考えられます。なお未来を創発的に議論するには、時間軸はある程度長いことが推奨されます(例えば20年以上先など)。
② 備品は、模造紙、サインペンなどを状況に応じて準備します。
③ ファシリテーター役は、スタッフ(ワークショップを企画・運営するメンバー)の中から選出します。
④ 事前に認識しておくべきスタッフの心得として最も重要なのは、未来にタイムスリップした際の時制の設定です。タ イムスリップした先の未来で起こったことは現在形で、それより前に起こったことは、過去形で話す必要があります。またフューチャー・デザインは楽しい場としてあるべきなので、参加者の様子を見て気を配りましょう。議論の進行はしても、誘導はしないように気を付ける必要があります。
ワークショップのイントロダクション
一般的な他のワークショップと同様に、参加者の自己紹介やアイスブレイクを行います。また「フューチャー・デザインとは何か」についても説明することが望ましいです。
ワーク1│未来人になる準備 -過去を振り返る(パスト・デザイン)
テーマについて、過去の社会を振り返り、今の社会が過去の世代の意思決定からどのように影響を受けているのかを理解します。
具体的には、テーマに関連する新聞記事や統計を確認し、過去に影響の大きかった出来事は何かを整理します。起こって良かったことと起こらない方がよかったことを洗い出し、過去の地域住民(進行資料ではデフォルトで30年前に設定)に対して「感謝」もしくは「避けるためのアドバイス」の形でメッセージを検討します。
ワーク2│未来人になり対話する(フューチャー・デザイン&現代人へのメッセージ)
ワークショップの参加者全員で、タイムスリップして未来に飛んだと仮定して仮想将来世代になりきり、未来の社会がどのようになっているか、テーマと関連させながら議論します。この時、上述のとおり、話す言葉はタイムスリップ先の時点の未来を現在形で話し、それ以前の出来事は過去形で話すことが重要です。
未来で起こって良かったことと起こらない方がよかったことを洗い出し、現在の住民に対して「感謝」もしくは「避けるためのアドバイス」の形でメッセージを検討します。
(参考時間配分)
ワークショップのイントロダクション:20分
ワーク1 未来人になる準備(パスト・デザイン):35分
ワーク2 未来人になり対話する(フューチャー・デザイン):50分
ワーク2 未来人になり対話する(現代人へのメッセージ):35分
(利用する教材)
ユーザー向けガイド(財務省Webサイト「はじめてのフューチャー・デザイン」より転載)
ワークシート(財務省Webサイト「はじめてのフューチャー・デザイン」より転載)
■ 実績・有用性
財務省Webサイト「はじめてのフューチャー・デザイン」の実践一覧によれば、これまで10の自治体がフューチャー・デザインの実践に取り組んできました(2025年12月12日現在)。
2016年の総合計画 策定時に住民と共にフューチャー・デザインを行った矢巾町では、フューチャー・デザイン・ワークショップを経て町民の住民協働意識が強まり、様々な事業で協力を得やすくなったとのことです。
2013年から大阪大学と共にフューチャー・デザインを実践してきた吹田市は、将来世代の視点で物事を考えることで多様なアイデアを話し合うことができたと実感していると言います。
■ 次のステップ
(参考文献)
西條辰義 (著)(2024). 『フューチャー・デザイン』日経BP,日本経済新聞出版.
フューチャー・デザインの基本的な考え方から、実践の法則、国内外の実践事例、関連する海外の仕組みなど、多岐にわたる内容が体系的にまとめられています。
はじめてのフューチャー・デザイン(財務省)
これからフューチャー・デザインにとりくもうとする方向けのWebサイトです。実践事例やワークショップにおけるツールなどが豊富に掲載されています。
フューチャー・デザイン | キヤノングローバル戦略研究所(キヤノングローバル戦略研究所)
研究者が開催するフューチャー・デザインの会合情報等が資料と共に掲載されています。中でもマニュアル「フューチャー・デザイン実践のために」は、実際にフューチャー・デザインを実行したいと思う人向けの解説書で、自分で編集できるワークショップ進行資料(PPT)も付録として掲載されています。
フューチャー・デザイン・コンソーシアム(フューチャー・デザイン・コンソーシアム)
フューチャー・デザインを教育で活用していこうとしている先生方のコンソーシアムです。実際に授業で活用した資料が閲覧できます。
■ 脚注・用語解説
仮想将来世代: 将来世代に「なりきる」人々の集団。フューチャー・デザイン・ワークショップでは、仮想将来世代グループは将来から今を考え、討議する。
将来可能性:私たちが持つ「目先の利益を差し置いてでも、将来世代のしあわせをめざすことでしあわせを 感じる」性質。
将来失敗:世代を超えて起こる失敗のこと。
関連スキル
未来洞察, ファシリテーション
関連フレームワーク
ステークホルダーマネジメント, フューチャー・デザイン
関連ケーススタディ
将来世代に配慮したまちづくりを行うためのフューチャー・デザインの活用(矢巾町)
掲載年月日
2026年2月
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